腔の読み 空即是色
空は何故“くう”というのでしょう? あまえあほか?「くうはくうやんか」 其の通り、くうはくうです。では、空は漢字が日本に伝わった頃も“くう”だったのでしょうか? 日本に最初に入ってきた読み方は呉音と言われています。魏・燭・呉、の三国時代も終わりの、当時の中国では南方に位置する呉の読み方・音が呉音です。この音は朝鮮、半島、特に百済を経由して、百済滅亡後はその遺臣が日本に渡来する事によりもたらされました。この呉音では、空は“く”です。呉音で“く”と読む漢字は今の日本の漢和辞書で300以上あります。ところが漢音(唐代の読み方)になると、1字を除いて殆どが“こう”の読み、もしくはそれに似た発音の読みになります。1字を除いてと記しましたが、其の1字は空です。即ち、呉音の“く”は殆ど漢音では“こう”になりましたが空だけは、“こう”にならず、“くう”のママです。数種の漢和辞典では空の読みを“くう”は慣用読み、漢音では“こう”、呉音は“く”となっています。私は、空を“くう”と日本人が読み続けてきたのは、仏教の影響ではないかと想像しています。すなわち、般若心経の「色即是空・空即是色」の空です。これを「しきそくぜこう・こうそくぜしき」では、何のことやら、こうの字が多すぎて、解脱どころか無明の闇に迷い込んで成仏出来そうにありません。私の「腔」の迷路に踏み込んでメチャ暑かった99年の夏もおわりました。